2012 年 73 巻 2 号 p. 416-421
症例は41歳,男性. 健診腹部USで肝腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当院受診となった.腹部CT上,肝左葉外側区域から内側区域尾側にかけ,多房性嚢胞状構造を含む境界明瞭な腫瘤を認めた.胆管嚢胞腺癌や肉腫を疑い,肝左葉切除術を施行したが,切除標本の免疫組織化学染色にて孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;以下SFT)と診断された.核異型や核分裂像はほぼ認められなかったが,一部に壊死像や胆管壁内への浸潤像を認めた.術後9カ月経過し,無再発生存中である.SFTは比較的まれな腫瘍であり,多くは胸膜に関連した胸腔内病変として発生する.なかでも肝臓原発のSFT報告例は極めてまれである.SFTの大部分は臨床的に良性の経過をたどるが,ときに悪性の転帰をたどる報告例もあり,今後も慎重な経過観察が必要と考えられた.