日本臨床外科学会雑誌
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症例
瘢痕性幽門狭窄による嘔吐で発症した食道破裂の1例
大槻 忠良宮永 太門遠藤 直樹平沼 知加志道傳 研司服部 昌和
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2012 年 73 巻 4 号 p. 827-831

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抄録

症例は47歳,女性.7カ月前に貧血を指摘され,上部消化管内視鏡検査で巨大十二指腸球部潰瘍(A2)と浮腫性の幽門部狭窄,逆流性食道炎(LA分類gradeD)および食道下部狭窄を認めた.PPI投与と下部食道バルーン拡張術を施行し軽快した.Helicobacter pylori(以下H.pylori)感染は陰性であった.今回,突然の嘔吐(血性吐物)と背部痛が出現して受診した.CT検査にて縦隔気腫と両側胸水,十二指腸球部の壁肥厚と胃拡張を認め,食道造影検査で食道下部より右側中心に縦隔内および胸腔内への造影剤の漏出を認めた.食道破裂と診断し,緊急手術を施行した.胸部下部食道右壁に2cm大の楕円形の破裂孔があり,直接縫合閉鎖と大網被覆を行い,胃空腸吻合を施行した.術後67日で退院した.本症例は,十二指腸潰瘍と幽門部狭窄に伴う逆流性食道炎が増悪し,嘔吐にて発症した食道破裂と考えられた.H.pylori陰性の十二指腸潰瘍による幽門狭窄に対しては当初から外科的治療も念頭に置く必要性が示唆された.

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© 2012 日本臨床外科学会
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