2012 年 73 巻 7 号 p. 1791-1796
症例は61歳,男性.黄疸と心窩部不快感を主訴に受診した.CTとMRIにて,十二指腸下行脚に内腔へ突出する隆起性病変と肝内外胆管の拡張を認めた.上部消化管内視鏡では十二指腸副乳頭部に隆起性病変を認めた.ERCPで副膵管の途絶像と総胆管の圧排像を認めた.生検で低-中分化型腺癌との診断を得,十二指腸副乳頭部癌の診断で膵頭十二指腸切除術施行した.病理所見は十二指腸の副膵管領域に3.3cm大の腫瘤を形成した管状腺癌で膵,十二指腸粘膜下,下部胆管に浸潤し,脈管浸襲と神経周囲浸潤が著明でリンパ節転移も見られた.十二指腸副乳頭部に腫瘤を形成する腫瘍はカルチノイド,腺癌,神経内分泌腫瘍などの報告例が見られるがいずれも少数である.中でも副膵管領域から発生する膵管癌の報告例は少ない.副乳頭は主乳頭部とは生理的環境が異なるため,病変の発生母地と組織型を注意深く検討して治療に当たる必要がある.