抄録
症例は82歳,女性.慢性B型肝炎の経過観察中に肝外側区域より突出する肝外発育型肝細胞癌を認めた.診断当初は他臓器浸潤や脈管侵襲,肝内転移を認めなかったが,無症状であったため治療を希望されず経過観察となった.しかし,診断後5カ月ほどして徐々に倦怠感や食思不振が出現してきたため,手術を行う方針となった.術前のCTでは,尾状葉(Spiegel葉)への肝内転移を認め,腫瘍は直接脾臓へ浸潤し,門脈左枝には腫瘍栓を認めた.肝予備能はLiver damage Bと不良であったが,左葉の大部分を腫瘍が占拠していたことから耐術可能と判断し,拡大肝左葉切除と脾臓合併切除を行った.術後,肝動注補助化学療法を約1年間行い,術後約2年経過した現在も無再発生存中である.肝外発育型肝細胞癌の脾臓への直接浸潤に関する報告は検索しえた限りでは2例のみと極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.