日本臨床外科学会雑誌
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症例
広範な被膜下血腫をきたした肝細胞癌破裂の1例
嘉山 貴文鈴木 昌八落合 秀人稲葉 圭介福本 和彦神藤 修
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2013 年 74 巻 10 号 p. 2869-2874

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抄録

症例は47歳,男性.20年前にB型肝炎と診断.3年前に肝機能障害を指摘された.ゴルフ練習後に上腹部痛を自覚し,肝細胞癌破裂による腹腔内出血として肝動脈塞栓術が施行された.その後に切除目的に当科外来紹介受診した.腹部CT・MRIでは,横隔膜直下のS7に血腫を伴う径7.5cmの肝細胞癌と肝右葉の広範囲に及ぶ被膜下血腫を認めた.発症から1カ月後に手術を行った.開腹時に腹水を認めず,肝右葉被膜下は血性貯留物で緊満し,腫瘍は横隔膜と強固に癒着していた.腫瘍細胞の散布を防ぐため,肝右葉切除に横隔膜合併切除を併用し,血腫と共に横隔膜と強固に癒着していた肝細胞癌を摘除した.組織学的には中分化型肝細胞癌を認め,腫瘍は破裂して被膜下血腫を形成していたが,横隔膜浸潤は認めなかった.術後第19病日に退院し,33カ月経過した現在,無再発生存中である.比較的まれな被膜下血腫に留まった破裂肝細胞癌につき文献的考察を含めて報告する.

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© 2013 日本臨床外科学会
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