抄録
症例は85歳,男性.嘔吐を主訴に来院した.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部の粘膜に小顆粒を伴う不整な糜爛を認め,その肛門側は狭窄し観察は不可能であった.同部位の生検結果で異型を有する腫瘍性腺管を認め,内視鏡所見より十二指腸癌と診断した.CT検査では十二指腸球部の壁肥厚を認めるものの,肝転移・腹膜播種・腹水はなかった.治癒切除可能と判断し,膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は6×5cmの肉眼型5型であった.病理組織検査では高分化型管状腺癌,SE,N1,ly1,v1であった.また,腫瘍の浸潤部の間質量が特に多い硬性型であった.今回,まれな硬性癌様浸潤を示した十二指腸分化型線癌の1例を経験したので報告する.