2015 年 76 巻 9 号 p. 2120-2124
症例は79歳,女性.66歳時に右乳癌に対してBq+Axを施行された.病理は硬癌,t1n1m0,ER(+),PgR(+)であった.残存乳腺照射後に化学療法および内分泌療法を施行された.76歳時から時折,高CEA血症を認め,79歳時の腹部超音波検査で肝S4に単発性の腫瘤を認めた.CT・MRIの造影態度は非典型的であったが,ERCPで左肝管狭窄を認めたため左肝管浸潤を伴う肝内胆管癌を疑い,肝左葉尾状葉切除,肝外胆管切除術を施行した.病理組織学的に乳癌の充実腺管癌や乳頭腺管癌に類似した組織形態を呈し,免疫染色でのER(+)・PgR(+)と併せて,乳癌肝転移と確定診断した.肝切除後は内分泌療法を継続し,現在肝切除後3年生存中である.乳癌の肝転移再発の頻度は低く,ほとんどは多発性で外科手術の適応になることは少ないが,本症例のように単発性で切除可能な場合は肝切除を治療の選択肢として考慮すべきである.