日本臨床外科学会雑誌
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症例
ビニール手袋の異食により小腸閉塞および穿孔をきたした1例
古谷 裕一郎寺田 卓郎宗本 義則飯田 善郎三井 毅
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2016 年 77 巻 3 号 p. 573-577

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抄録

精神発達遅滞患者や認知症患者における異食の報告例は散見される.今回,ビニール手袋の異食により小腸閉塞および穿孔をきたし,手術を要した1例を経験したので報告する.
患者は出生時より精神発達遅滞がある17歳,男性.突然の嘔吐を主訴に近医を受診し,腸炎と診断された.しかし,症状の改善はなく腹痛も出現したため,翌日に当院受診となった.腹部単純CTにて回腸内に直径約50mmの低吸収の塊を認め,異物が疑われた.過去に布団の綿の異食歴があり,異物は布団の綿が疑われた.自然排泄を期待し経過観察の方針としたが症状の改善はなく,7日間の経過観察ののち手術を施行した.腹腔鏡にて観察すると回腸に閉塞部を認めた.同部に異物が嵌頓し,腸管は菲薄化し穿孔が疑われたため,小切開を追加し小腸部分切除術を施行した.異物は2枚のビニール手袋が一塊となったものであった.術後は腸管麻痺や創部感染を併発したが,術後28日目に退院した.

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