日本臨床外科学会雑誌
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症例
術後早期に多発骨格筋転移をきたした下部胆管癌の1例
上村 和康磯野 忠大植田 猛芦沢 直樹野村 明芳橘 充弘藤井 秀樹
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キーワード: 胆管癌, 骨格筋転移
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2016 年 77 巻 3 号 p. 631-637

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抄録

胆管癌の骨格筋転移は極めてまれで3例の報告があるのみである.胆管癌切除後に多発骨格筋転移をきたした症例を経験した.症例は73歳,男性.下部胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行し退院した.外来通院中の術後41日目に右上腕に疼痛・腫脹を伴う急速に増大する腫瘤が出現し,右三角筋内の血腫を疑い経過観察していた.術後68日目に左大胸筋に同様の腫瘤出現のため腫瘍を疑い,右上腕腫瘤の針生検から胆管癌の転移と診断された.術後83日目に両側臀筋,術後127日目に右大胸筋・右大腿筋に転移が出現した.化学療法は継続できず,放射線療法を施行し局所の症状は緩和されたが,術後149日目に永眠された.胆管癌の骨格筋転移は極めてまれであり治療は確立されていないが,早期の治療にて予後が改善する可能性があり,悪性腫瘍の既往のある患者に骨格筋腫瘤が出現した場合,転移性腫瘍を念頭に置く必要があると考えられた.

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© 2016 日本臨床外科学会
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