日本臨床外科学会雑誌
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症例
Damage control surgeryが有効であった腹部鈍的外傷によるIIIb型膵損傷の1例
二階 春香梅原 豊森田 隆幸
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2016 年 77 巻 3 号 p. 638-643

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抄録

症例は39歳,男性.ばん馬レースで上腹部を馬に蹴られ,ショックバイタルで当院に救急搬送された.上腹部に圧痛を認め板状硬であった.腹部CTでは,肝表面・十二指腸周囲にfree air,膵頭部の腫大を認めた.右腎動脈が断裂し後腹膜血腫を認めた.また,肝後区域に低吸収域を認めた.緊急開腹術を施行したところ,膵頭部は挫滅し主膵管・膵内胆管損傷を伴い,十二指腸下行脚は離断されていた.膵頭十二指腸切除を施行し,再建はせず総肝管・膵管チューブを挿入,膵断端にドレーンを留置して初回手術を終了し,open abdominal managementとした.手術直後にTAEを施行した.約48時間後に再建術を施行した.術後経過は良好であった.膵頭十二指腸切除術の適応となる重傷膵損傷に対し,初回手術は切除・ドレナージまでに留め,二期的に再建術を施行するというdamage control strategyが有効であった.

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© 2016 日本臨床外科学会
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