2016 年 77 巻 4 号 p. 979-982
症例は53歳,女性.2014年8月,子宮筋腫に対して腹式単純子宮全摘術を施行された.2015年2月,下腹部痛を主訴に当院へ救急搬入となった.理学所見・画像所見から骨盤腹膜炎と診断したが,原疾患に関しては確定できなかった.保存的治療では,全身状態が改善せず,試験開腹術を施行した.骨盤底の膿瘍形成・膣断端の離開・小腸の炎症性癒着を認め,膣断端離開に伴う腹腔内膿瘍,骨盤腹膜炎と診断した.女性の骨盤腹膜炎の病態は様々であり,消化器科疾患・泌尿器科疾患に加え,婦人科疾患も鑑別にあげる必要がある.中でも,子宮全摘術後の膣断端離開は頻度の少ない合併症であり,それに伴う膿瘍形成,骨盤腹膜炎の報告は極めて稀である.子宮全摘術の既往がある症例での骨盤腹膜炎では,一般的な婦人科疾患だけでなく,膣断端離開の可能性も考慮して治療に臨むことが重要と考えた.自験例について文献的考察を含め報告する.