日本臨床外科学会雑誌
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症例
グリセリン浣腸による直腸損傷から溶血性腎不全を発症した1例
大東 雄一郎大槻 憲一薮内 裕也松本 宗明中本 貴透北東 大督
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2016 年 77 巻 5 号 p. 1171-1176

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抄録

グリセリン浣腸による直腸損傷から溶血性の急性腎不全を発症した症例を経験したので報告する.
患者は58歳,女性.胆石症に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定していた.手術前の前処置としてグリセリン浣腸を行ったところ肛門痛と少量の血便を認めたが,予定通り入室し手術を行った.術中より血尿を認め,尿量は少なかった.術後も血尿は続き,血液検査で溶血を認め,ほぼ無尿となった.手術翌日の血液検査,CTで急性腎不全と直腸穿孔を認めた.術前浣腸後の経過から,浣腸による直腸損傷およびグリセリン血中移行による溶血性の急性腎不全と診断した.このため,手術翌日より血液透析を開始し,ハプトグロビンを投与した.直腸穿孔に対しては保存的治療を行った.腎不全・直腸穿孔とも改善し,術後第28病日に退院した.

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