日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
膵管ドレナージによる保存的治療が有効であったIIIb型外傷性膵損傷の1例
神野 孝徳久留宮 康浩世古口 英小林 聡河合 清貴桐山 宗泰
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 77 巻 5 号 p. 1223-1228

詳細
抄録

症例は60歳,男性.鉄製の柵に上腹部を強打し当院に救急搬送された.腹部CTで膵頭部損傷を認めた.内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)では造影剤の漏出は認めなかったが,膵管損傷を強く疑い内視鏡的経鼻膵管ドレナージ(ENPD)チューブを留置し保存的治療を行った.第2病日のENPD造影検査で膵頭部主膵管より造影剤の漏出を認めIIIb型膵損傷と診断したが,全身状態は安定していたため慎重に保存的治療を継続した.第25病日にENPDチューブを抜去し,内視鏡的逆行性膵管ドレナージ(ERPD)チューブに交換,チューブを留置したまま第36病日に退院となった.受傷3カ月後に造影剤の漏出のないことを確認しERPDチューブを抜去,その後再燃することなく受傷13カ月後に終診となった.
IIIb型膵損傷に対し膵管ドレナージにより手術を回避できる症例が存在するため,その適応や治療方針に関し,今後さらなる症例の集積と検討が必要である.

著者関連情報
© 2016 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top