日本臨床外科学会雑誌
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症例
成人に発生した後腹膜成熟嚢胞奇形腫の1例
徳田 和憲高山 和之勝原 和博堀内 淳延原 研二酒井 堅
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2016 年 77 巻 8 号 p. 2079-2083

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抄録

後腹膜原発の奇形腫は比較的稀な疾患であり,その多くは小児期に発症するため,成人例は極めて稀である.今回,外科的切除を施行し診断された成熟嚢胞奇形腫の1例を経験した.症例は78歳の女性で,背部痛の精査で行ったCT検査にて,後腹膜腫瘍を指摘された.腫瘍は約8×5cmで,左卵巣動脈の前面に存在していた.術前診断として,粘液性腫瘍や奇形腫などを疑い,腫瘍切除術を施行した.摘出標本は表面平滑な嚢胞状の腫瘍で,内部は茶褐色の粘調な液体で満たされていた.病理組織学的診断では,皮脂腺を伴う嚢胞性腫瘍で,成熟嚢胞奇形腫の診断であり,悪性所見は認められなかった.術後経過は問題なく,術後第8病日に退院となった.成人の後腹膜成熟嚢胞奇形腫は極めて稀な疾患である.悪性転化症例は予後不良だが,転化前なら切除により良好な予後が得られる.成人の後腹膜奇形腫に対しては,外科的切除を行うべきである.

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