抄録
Lynch症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とし,大腸癌などの様々な関連腫瘍を好発する常染色体優性遺伝性疾患である.癌家族歴は乏しいものの臨床・病理学的特徴を契機に診断しえたLynch症候群の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.自験例は40歳の男性.健診の便潜血陽性を契機に盲腸および横行結腸癌と診断され,拡大結腸右半切除術D3を施行した.第1度近親者に癌家族歴を認めなかったが,若年の同時性多発結腸癌で,腫瘍内リンパ球浸潤などの高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)大腸癌に特徴的な組織学的所見を有していたことからLynch症候群を疑った.MSI検査でMSI-Hを呈し,ミスマッチ修復タンパクの免疫染色にてMLH1とPMS2の欠失を認めた.遺伝カウンセリング後の遺伝学的検査で,MLH1の生殖細胞系列変異を認め,Lynch症候群と診断した.