日本臨床外科学会雑誌
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症例
胃静脈瘤が診断の契機となった前立腺癌脾門部転移の1例
本田 晴康林 誠一津澤 豊一川田 崇雄熊谷 嘉隆
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2017 年 78 巻 6 号 p. 1410-1414

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抄録

症例は77歳,男性.8年前に前立腺癌と診断され,内分泌療法中.左鎖骨上腫瘤を主訴に当科を初診.吸引細胞診で前立腺癌転移の疑いとされた.また,ピロリ感染胃炎にて除菌療法後に施行された胃内視鏡検査で,前年にはなかった胃静脈瘤を指摘された.血小板数は7.4万/μlと低下していた.腹部CT検査で脾門部に4cm大の腫瘤を認めた.脾門部腫瘍による局所性門脈圧亢進症と診断し,膵体尾部・脾切除を施行した.切除標本所見で脾門部に25mm大の灰白色,弾性硬の腫瘍が見られた.組織学的にはPSA染色陽性で,前立腺癌の転移と診断された.腫瘍は膵および脾実質内に微小浸潤を認め,脾静脈内腫瘍塞栓を認めた.術後,血小板数は正常化し,胃内視鏡所見でも静脈瘤は消失した.転移性腫瘍が脾門部に生じた症例の報告は少なく,局所性門脈圧亢進症を呈したのは自験例のみであった.

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