2017 年 78 巻 8 号 p. 1785-1789
症例は64歳,男性.心窩部痛,黒色便を主訴に当院救急外来を受診.上部消化管内視鏡検査にて,胃体中下部後壁に3型腫瘍を認め,生検の結果,低分化型腺癌と診断し胃全摘術を施行した.切除標本では,胃体部後壁に二つの異なる中心を有する潰瘍性病変がみられた.病理組織学的に,低分化型腺癌と神経内分泌癌の所見を認め,両者の間には直接の連続性や移行像はみられず,衝突癌と診断した.また,背景胃の組織にびまん性胃粘膜下異所腺の所見が認められた.びまん性胃粘膜下異所腺を伴った胃腺癌と神経内分泌癌の衝突癌の報告例はなく,本症例は極めて稀であると考えられた.