2018 年 79 巻 5 号 p. 1044-1048
症例は66歳,男性.便潜血陽性の精査にて施行した大腸内視鏡でS状結腸に陥凹を伴う隆起性病変を認め,生検で粘液癌の診断であった.虫垂開口部付近に粘膜下腫瘍状の隆起を認めたが,生検は施行しなかった.腹部CTにてS状結腸と盲腸に接した7×4cm大の嚢胞状腫瘤を認めた.虫垂粘液癌のS状結腸浸潤と術前診断し,D3郭清を伴う回盲部切除とS状結腸,回腸部分切除術を施行した.術後はmFOLFOX6による補助化学療法を施行したが,1年6カ月後に腹部大動脈周囲リンパ節再発をきたし,その後1年以上bevacizumab+capecitabineによる化学療法を継続中である.今回の文献検索では,S状結腸浸潤を伴う虫垂癌の報告は3例のみであり,術前診断しえたものは1例のみであった.