2019 年 80 巻 10 号 p. 1819-1823
症例は54歳,閉経後の女性.性同一性障害のため,女性から男性への適合目的に男性ホルモンを投与中であった.乳癌検診で右乳房石灰化を指摘され,近医を受診した.ステレオガイド下針生検で,粘液癌の診断であった.術前診断は,cT1N0M0 Stage I Aであり,乳房全切除とセンチネルリンパ節生検を施行した.最終病理診断は,mucinous carcinoma,pT1cN0M0,Stage I A,ER:score5,PgR:score5,HER2:1+,Ki-67:1%であった.術後,アロマターゼ阻害薬を内服し,術後24カ月再発なく経過中である.アンドロゲンは,本人希望により術後に再開した.
性同一性障害のために,アンドロゲンを投与中に発生した乳癌の報告は稀である.アンドロゲン投与による乳癌発症リスクと,発症後の予後に与える影響について,今後更なるデータの蓄積が望まれる.