2019 年 80 巻 4 号 p. 786-790
症例は68歳,女性.6年前に肝細胞癌に対し,尾状葉切除術を施行した(中分化型肝細胞癌,pT2N0M0,pStage II).他院で経過観察中に腫瘍マーカーの上昇があり,当科紹介となった.CTで中左肝静脈根部に肝細胞癌再発を認め,縦隔内にも2箇所転移を疑う腫瘤を認めた.肝細胞癌再発・縦隔リンパ節転移と判断したが,限局しており切除の方針とし,拡大左肝切除・胸骨正中切開による縦隔腫瘍切除を施行した.病理結果は中分化型肝細胞癌局所再発・縦隔リンパ節転移であった.術後3カ月で気管分岐部に増大傾向の腫瘤が出現し,縦隔リンパ節転移が疑われた.単発で新出病変の出現がないことから切除適応と判断し,再発切除時から13カ月後に右開胸で縦隔腫瘍を切除した.病理は縦隔リンパ節転移の診断であった.術後腫瘍マーカーは正常化し,以降4年間,無再発生存中である.肝細胞癌縦隔リンパ節転移は多発でも限局していれば切除も選択肢と考えられた.