2020 年 81 巻 8 号 p. 1604-1610
症例は69歳,男性.5年前に他院で食道癌に対して胸腔鏡下食道切除,後縦隔経路胃管再建術を施行され,術後再発なく経過していた.食道癌術前より膵頭部に膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)を指摘されていた.嚢胞の増大を契機に精査が行われ,混合型IPMNの診断となり,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(pylorus preserving pancreaticoduodenectomy:PPPD)を施行した.胃管血流保持のため右胃動静脈,右胃大網動静脈を温存し,術中indocyanine green(ICG)蛍光法で胃管血流が十分であることを確認し,手術終了とした.食道癌術後の膵頭部腫瘍に対してPPPDを施行するにあたり,術中に画像検査で胃管血流評価を行った報告は極めて稀であり,残存胃管の血流評価に術中ICG蛍光法が有用であると考えられた.