2021 年 82 巻 2 号 p. 362-366
症例は59歳,女性.悪性リンパ腫治療後,フォロー目的のPET-CTにて既知の線維腺腫(以下FA)内側にFDG異常集積を認め,当科を紹介受診.触診で右AC区域に直径4cmの腫瘤を触知し,マンモグラフィでは同区域に既知のFAとその内側背部に不均一な石灰化の集簇を認めた.乳房超音波検査では,同区域に陳旧性FAとその内側に不整形低エコー腫瘤を認めた.上記2箇所の病変に対し針生検を施行したところ,FA内側の腫瘤は浸潤性乳管癌の診断,FAにも一部に癌の浸潤を認めた.乳房造影MRIでは,右A区域の陳旧性FA内側に不均一な造影効果を呈する不整形腫瘤とFAの辺縁や内部の隔壁に沿うように強い造影効果を認め,病変の拡がりが確認できた.乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行.病理組織所見では,FA内に浸潤する硬性型浸潤性乳管癌を認め,FA結節の周囲を取り巻く疎な間隙部分優位に癌細胞が入り込むように浸潤している所見であり,特異な浸潤型式を呈していた.