2021 年 82 巻 3 号 p. 609-615
症例は81歳,男性.肛門の違和感を主訴に近医を受診し,肛門周囲Paget病の診断で当院に紹介となった.肛門管,直腸内に明らかな腫瘤や潰瘍形成を認めなかったが,生検の免疫染色の結果はCK20陽性,GCPFD15陰性であり,直腸肛門管癌のpagetoid spreadと診断し腹会陰式直腸切断術を施行した.病理組織検査では肛門腺内に腫瘍細胞を認め,さらに肛門管上皮から周囲皮膚へ印環細胞癌の進展を認めたことより,肛門腺より発生した肛門管癌のpagetoid spreadと診断した.自験例は肛門管内に明らかな腫瘤を形成しない肛門腺原発の肛門管上皮内癌がpagetoid spreadを呈した非常に稀な症例であり,若干の文献的考察を含め報告する.