2021 年 82 巻 5 号 p. 977-982
症例は10年前に婦人科手術の既往がある72歳の女性.総胆管結石の精査で施行した腹部CTで,肝S8に充実成分を伴う嚢胞性病変を指摘された.その病変は徐々に増大傾向を示し,肝嚢胞腺癌の疑いで手術の方針となった.術中所見では腫瘍は横隔膜から突出し,肝内に完全に埋没していた.腫瘍と接する横隔膜を部分切除し,腫瘍を摘出した.病理学的検査で腫瘤は卵巣成人型顆粒膜細胞腫(AGCT)であり,AGCTの播種と診断した.術後の病歴聴取により,婦人科手術はAGCTに対する付属器摘出であったことが判明した.
AGCTは卵巣悪性腫瘍の2-5%を占める比較的稀な腫瘍である.予後は良好だが,30%に晩期再発を認める.播種病変は骨盤内が一般的であり,上腹部への播種は稀である.今回われわれは術前に肝腫瘍診断した鑑別が困難であったAGCTの横隔膜への腹膜播種の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.