2021 年 82 巻 7 号 p. 1423-1429
症例は37歳,女性.右鼠径部の腫脹と疼痛を主訴に当科を受診した.腹部造影CTで,右鼠径部に境界不明瞭な淡い造影効果を示す軟部陰影と,腹腔内に右子宮円靱帯と連続した嚢胞性病変を認め,子宮内膜症を併存したNuck管水腫が疑われ,切除の方針とした.腹腔鏡による観察で,右子宮円靱帯と連続した嚢胞性腫瘤と右内鼠径輪の開大を認め,Nuck管水腫と右外鼠径ヘルニアの合併と診断した.続いて,前方アプローチで多房性腫瘤を伴った子宮円靱帯を可及的に末梢側で切離した後,中枢側への剥離を追加し嚢胞性腫瘤を損傷することなく標本を摘出した.腹腔内に腹水や癒着は認めず,同時にtransabdominal preperitoneal approach(TAPP法)でヘルニア修復術も施行した.Nuck管水腫の治療は完全切除が重要であり,自験例のように病変の局在が鼠径管から腹腔内まで広範に至ることもあるため,本術式が完全切除に有用であると考えられた.