日本臨床外科学会雑誌
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82 巻, 7 号
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綜説
  • 小澤 壯治
    2021 年82 巻7 号 p. 1271-1280
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    本邦における食道癌の外科治療は,1925年の三宅による報告が最初と考えられ,その後手術手技の工夫や,周術期管理や麻酔法の進歩などにより手術の安全性が高まり,手術の短期成績の向上が図られた.そして遠隔成績の向上を目的として,より高い根治性を目指した頸部上縦隔リンパ節を重視した3領域郭清術が行われるようになった.やがて更なる治療成績の向上を目指して,集学的治療が検討され,進行度に応じた補助療法が標準的になった.(化学)放射線療法後の癌遺残や再発に対するサルベージ手術や,切除不能局所進行食道癌の導入療法後のコンバージョン手術など,手術適応が拡大してきた.また,1990年代には低侵襲治療として内視鏡下手術が開始され,2000年代にはロボット支援下手術が導入された.今後は,進行度やリスクに応じて低侵襲手術を中心に手術方法が変化すると共に,食道癌治療施設の集約化が予想される.

臨床経験
  • 鳥羽 博明, 滝沢 宏光, 青山 万理子, 井上 寛章, 丹黒 章
    2021 年82 巻7 号 p. 1281-1285
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:より良いがんの地域連携体制を構築するための包括的な取り組みについて紹介する.方法:かかりつけ医を対象に行った,がん患者の連携の可否と役割分担できる診療内容に関するアンケート結果をもとに,情報の可視化,新たな連携クリティカルパス(連携パス)の導入,拠点病院内の環境整備を行った.結果:まず,アンケート結果の情報を整理し,誰もがアクセスできるよう病院ホームページにアップして可視化した.さらに,予防的G-CSF(Granulocyte-Colony Stimulating Factor)投与連携パスを運用し,少数だが4例に適用した.加えて,入院中に医療ソーシャルワーカーが介入してかかりつけ医を決定し,文書作成を1分以内に完遂できる簡便な電子カルテ運用にして医師の作業負担を減らし,連携件数を約10倍増加させた.結語:より早期から緊密に情報交換し,役割分担することで,患者にとって満足度の高いがん医療を提供できる.今回の取り組みは,より良い連携体制構築に寄与すると考える.

症例
  • 冨田 香, 河合 由紀, 北村 美奈, 能島 舞, 森谷 鈴子, 目片 英治, 谷 眞至
    2021 年82 巻7 号 p. 1286-1290
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis:以下,GM)は稀な乳腺の慢性炎症性疾患である.肉芽腫や膿瘍形成を特徴とするが,診断・治療に難渋することが多い.今回われわれは,両側性・異時性にGMを発症し,最終的に両側乳房全切除術に至った症例を経験した.

    症例は34歳,女性.右乳房に広範な乳腺炎を発症し前医を受診.GMを疑われたが針生検では診断に至らず.経過中,結節性紅斑が出現しステロイドパルス療法を受け,乳腺炎の症状も改善した.その後ステロイドは漸減,終了した.

    その7カ月後,左乳腺炎となり,針生検でGMと診断された.ステロイド治療を開始されたが,減量を試みるたびに増悪した.保存的治療は7カ月間継続したが,両側乳房全切除術を強く希望し,当院へ紹介となった.

    両側乳房に対し乳頭温存乳房全切除術を施行したところ,治癒したと考えられた右乳房にも肉芽腫が見られ,両側ともにGMの病理診断に至った.その後,症状の再燃なく経過している.

  • 椎名 伸充, 若林 康夫, 崔 玉仙, 大坪 義尚, 白井 みどり, 木村 真二郎
    2021 年82 巻7 号 p. 1291-1296
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,女性.17歳時に左腋窩部皮膚の1cm大の炎症性粉瘤に対し,切開排膿が行われた.26歳時に感染が再燃し,局所麻酔下に摘出術が施行された.病理検査の結果,粉瘤の診断であった.30歳台より再び腋窩部に腫瘤を自覚していたが様子を見ていた.今回,検診マンモグラフィーにて左腋窩部に巨大な腫瘤病変を指摘され受診となる.エコー・CTでは腋窩部に12cm大の多房性で,一部は胸筋間まで進展する嚢胞性病変を認めた.全身麻酔下に腫瘤切除術が施行され,病理結果は表皮嚢腫の診断であり,30年前に手術をした粉瘤の遺残が再発したものと考えられた.

    表皮嚢腫の再発は嚢腫組織の遺残により起こるとされるが,腋窩において本症例のように深部の組織に癒着,胸筋間に進展し,巨大化して再発が明らかとなる症例の報告は認められない.当初は小さな表皮嚢腫であっても再発が繰り返されることにより,手術が困難となることが示された症例である.

  • 一瀬 友希, 大崎 昭彦, 藤本 章博, 貫井 麻未, 松浦 一生, 佐伯 俊昭
    2021 年82 巻7 号 p. 1297-1302
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    腋窩腫瘤で発見され,診断困難であった浸潤性乳癌を経験したので報告する.症例は60歳の女性.自壊した腋窩腫瘤を主訴に皮膚科を受診し,腫瘤の一部を生検された.病理組織はcarcinomaで皮脂腺または汗腺由来の悪性腫瘍を考えるが,異所性乳癌の可能性もあるとの診断であった.エストロゲン受容体陽性であり乳癌が考えられたため,自壊した腋窩腫瘤の局所コントロールと確定診断の目的で局所腫瘤切除+センチネルリンパ節生検を施行し,迅速病理診断で腋窩リンパ節転移を認め,腋窩郭清を追加した.永久病理組織診断は,浸潤径2.5cmの浸潤性微小乳頭癌であった.切除断端は陰性,腋窩リンパ節は3個に転移が認められたため,術後化学療法施行後,乳房,腋窩および鎖骨上を含めた術後照射を行った.腋窩部皮下に局在し,診断に苦慮した浸潤性微小乳頭癌の1例を経験した.

  • 西山 加那子, 日下部 恵梨菜, 志田原 智広, 田口 加奈, 北澤 理子, 亀井 義明, 高田 泰次
    2021 年82 巻7 号 p. 1303-1309
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は74歳,女性.左C区域に約8mm大の不整形腫瘤を認め,針生検を施行し,浸潤性乳管癌と診断.左乳房全切除術+センチネルリンパ節生検を施行し,センチネルリンパ節に転移を認めたため腋窩郭清術を追加した.左乳癌pT1bN1(sn)M0 Stage IIA,ER+(>90%),PgR+(5%),HER2 negative(1+),Ki-67 5%と診断し,術後アナストロゾール内服を開始した.術後5カ月で症状は無くCEA上昇を認め,消化管精査のため上部下部内視鏡検査を施行.下部内視鏡検査にて横行結腸に隆起性病変を認め,生検にて乳癌の結腸転移と診断した.エリブリンを開始し,一時的に腫瘍マーカーは低下するも5カ月で再上昇を認め,皮膚転移と胃転移が出現した.パクリタキセルに変更するも全身状態不良となり,2カ月後に死亡した.Luminal A typeの浸潤性乳管癌が早期に転移再発した症例であり,若干の文献的考察を含めて報告する.

  • 黒岩 正嗣, 浜 善久, 草間 啓, 佐野 周生, 坂井 紘紀, 袖山 治嗣, 小林 実喜子, 伊藤 以知郎
    2021 年82 巻7 号 p. 1310-1314
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    肺癌の小腸転移と鑑別を要した乳癌晩期再発の1例を経験した.症例は69歳,女性.24年前に左乳癌に対して手術が施行され,術後内分泌療法が施行された.その後,フォローは終了となったが1年前に左肺腺癌Stage IVと診断され,化学放射線療法が施行されていた.下腹部痛を主訴に当院を受診し,CTで小腸腫瘍に伴う小腸の腸重積症と診断された.腹腔鏡補助下小腸部分切除術が施行された.摘出した小腸腫瘍を24年前の乳癌の病理と比較したところ,類似する病理組織所見を認め,乳癌の晩期再発と診断された.乳癌の手術歴がある転移性小腸腫瘍と遭遇した場合,乳癌の晩期再発も鑑別に挙げる必要がある.

  • 牧野 晃大, 小林 亮, 北 雄介, 久力 権
    2021 年82 巻7 号 p. 1315-1320
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は58歳,女性.失語症と右上肢麻痺で当院へ救急搬送となり,精査で左中大脳動脈塞栓症と診断され,血栓回収療法を施行された.特記すべき既往歴はなかった.頭部MRIで脳主幹動脈の狭窄はなく,経食道エコー検査で卵円孔開存なども認めなかった.胸部CTで左肺下葉に肺動静脈瘻を指摘され,Rendu-Osler-Weber病を伴わない右左シャントによる,比較的稀な奇異性脳塞栓症と考えられた.治療は経皮的カテーテル塞栓術が第一選択とされることが多いが,本症例は病変が肺末梢に位置しており,流出血管も比較的太く,安全性や根治性の面から,胸腔鏡下肺部分切除術を選択した.全身状態などから手術が許容される場合には,肺末梢の単発の肺動静脈瘻に対しては,胸腔鏡下肺部分切除術は有用な治療法と考えられたため,文献的考察を加えて報告する.

  • 東本 郁, 鈴木 温, 臼田 昌広, 手島 仁, 宮田 剛
    2021 年82 巻7 号 p. 1321-1326
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性.2019年3月に呑酸,体重減少を主訴に近医を受診し,精査目的で当院紹介となった.上部内視鏡検査で切歯から40cmの食道右側に憩室を認めた.食道造影検査において横隔膜上で5cm大の憩室内に造影剤が停滞し,憩室が通過障害の原因と考えられた.有症状の横隔膜上食道憩室の診断で,腹腔鏡下食道憩室切除術を施行した.術中に内視鏡検査を行い,憩室は切歯から40~45cmの食道右側に突出し,胃食道接合部との距離は2cmであった.憩室の遺残や内腔の狭窄をきたさないように内視鏡で確認しながら,自動縫合器で憩室を切除した.術後経過は良好で,術後12日目に退院した.横隔膜上食道憩室は比較的まれな疾患である.術式については一定の見解が得られておらず,アプローチ法として腹腔鏡下手術の報告は少ない.食道胃接合部からの距離が近い横隔膜上食道憩室において,腹腔鏡下食道憩室切除術は安全,低侵襲に施行できる有用な術式と思われる.

  • 中井 智暉, 中村 公紀, 尾島 敏康, 早田 啓治, 竹内 昭博, 割栢 健史, 三笠 友理奈, 山上 裕機
    2021 年82 巻7 号 p. 1327-1333
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,女性.食思不振を主訴に近医を受診し,CEA高値のため精査目的に当院へ紹介となった.上部消化管内視鏡検査で胃体上部から胃角部にかけての4型進行胃癌を認めた.生検の結果,中~低分化腺癌であった.審査腹腔鏡にて腹腔洗浄細胞診陽性,腹膜播種を認め,cT4aN2M1(PER),cStage IVBと診断し,SOX療法(S-1+L-OHP)による化学療法を外来で5コース施行した.5コース施行後,原発巣およびリンパ節腫大は縮小し,再度審査腹腔鏡を施行にて腹膜播種および細胞診が陰転化しており,ycT4aN2M0H0P0CY0,ycStage IIIであったため,conversion手術を施行した.病理組織検査の結果,リンパ節は腫瘍成分が消失しており,原発巣も線維化を認めるのみで腫瘍細胞は認めず,組織学的効果判定はGrade3でpathological complete response(pCR)と判断した.術後経過は良好で,術後10カ月の現在,S-1内服を継続し厳重な経過観察を行っているが,腫瘍の再発を認めていない.

  • 中尾 英一郎, 石田 善敬, 笹子 三津留, 倉橋 康典, 廣田 誠一, 篠原 尚
    2021 年82 巻7 号 p. 1334-1338
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は78歳の女性で,2008年に早期胃癌に対して幽門側胃切除,D2リンパ節郭清を実施した.病理診断は脈管浸潤やリンパ節転移のない,胃粘膜内にとどまる最大径40mmの低分化腺癌であった.術後5年間無再発で経過したが,6年3カ月後のCTで左副腎近傍に20mmの腫瘤が指摘された.内分泌学的検査から原発性アルドステロン症を疑い,後腹膜鏡下に摘出したが,病理検査で胃癌術後の傍大動脈リンパ節転移と診断された.2カ月後に同部に新たなリンパ節の再腫大を確認し,SOX療法6コース後に傍大動脈リンパ節郭清を実施した.郭清リンパ節に病理学的悪性所見は認めなかったが,その2年6カ月後に左鎖骨下リンパ節および卵巣転移が判明し,現在化学療法中である.胃粘膜内癌の晩期再発は極めて稀であるが,自験例のように脈管浸潤陰性であっても遠隔リンパ節に再発し得るため,再発を完全に除外せずに臨床的対応をすべきである.

  • 佐井 佳世, 久保 尚士, 櫻井 克宣, 玉森 豊, 前田 清
    2021 年82 巻7 号 p. 1339-1343
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は86歳の男性.心窩部不快感を主訴に近医を受診し,内視鏡検査で胃角部小彎に3型進行胃癌を指摘され,当院を受診した.諸検査で,cT3N2M0 Stage IIIと診断し,手術の方針とした.術中所見では肝門部リンパ節,総肝動脈リンパ節,左胃動脈リンパ節が累々と腫大しており,根治的切除を断念し,胃切除のみを行った.術後にTS-1を開始するも,術後10カ月目のCTで転移リンパ節の増大を認め,ラムシルマブ併用パクリタキセル療法に変更したが,リンパ節は縮小せず,術後19カ月目よりニボルマブの投与を開始した.術後22カ月目のCTでリンパ節腫大は消失したが,ニボルマブによる下垂体機能低下症が出現し,投与を中止した.術後40カ月現在,再発なく生存中である.転移再発胃癌に対するニボルマブの奏効率は11%程度と報告され,中でも完全奏効は極めて稀である.今回,ニボルマブを投与し完全奏効を得て長期生存中の切除不能進行胃癌を経験したので報告する.

  • 小林 陽介, 尤 礼佳, 大平 正典, 鳥海 史樹, 遠藤 髙志, 原田 裕久
    2021 年82 巻7 号 p. 1344-1348
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は51歳,男性.路上生活者.心窩部痛を10日間我慢していた.CTでfree air,十二指腸球部の不整な肥厚,膿瘍形成を認め,十二指腸穿孔の診断で手術を行った.十二指腸球部は大きく欠損し,総胆管との瘻孔を認めた.十二指腸を下行脚近位で離断し,胃前庭部切除術・B-II再建,胆嚢摘出術(胆道外瘻)を実施した.潰瘍底が膵頭部と強固に癒着し,剥離困難であったため,粘膜を凝固し温存した.3カ月後に粘膜遺残部に粘液瘤を認めた.留置したドレーンからOK-432やエタノールを注入したが,内腔は閉鎖しなかった.次に,ドレーン孔を拡張して内視鏡と泌尿器科デバイスを挿入し,瘤内部の粘膜を焼灼した.以後,粘液流出は止まり,病変も縮小した.巨大十二指腸潰瘍穿孔は標準化された術式がなく,予後不良な病態とされる.われわれは,十二指腸憩室化と胆道外瘻化により腸液の制御はできたが,粘液瘤という稀な合併症を経験したため報告する.

  • 藤井 友夏里, 桑原 博, 中川 俊作, 赤須 雅文, 中村 典明, 五関 謹秀
    2021 年82 巻7 号 p. 1349-1353
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,男性.認知症で施設に入所中であった.腹部手術歴なし.2日前からの発熱精査の単純CTで小腸内に周囲に気泡を伴う異物を疑う所見あり.嘔吐も見られ,腸閉塞の診断で紹介受診.保存治療を行っていたが改善が見られず,5日後に腸閉塞解除目的で腹腔鏡手術を施行.術中所見では腸管癒着はなく,小腸内に異物を疑う所見を認めたため,同部位を切開し異物を摘出した.異物は冷却ジェルシートと考えられた.術後に腸閉塞は改善し,退院となった.冷却ジェルシートは時間をかけて膨張するため,誤飲した場合は小腸で腸閉塞をきたすことが多く,保存的治療では軽快しない可能性が高いと考えられた.

    冷却ジェルシート誤飲による腸閉塞は本邦で3例目と極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 宅間 敬晃, 安宅 亮, 池野 嘉信, 多賀 亮, 廣瀬 哲朗, 土井 隆一郎
    2021 年82 巻7 号 p. 1354-1358
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,女性.3年前に子宮頸癌に対して,広汎子宮全摘術および骨盤リンパ節郭清術,骨盤部放射線治療を施行された.突然の右下肢痛を主訴に当院救急外来を受診し,腹部造影CTで回腸にclosed loopがあり,絞扼性腸閉塞を疑った.腹部症状は乏しく非典型的であったが,手術既往を考慮し緊急手術を施行した.術中所見は,前回の手術で遊離された右外腸骨血管と右内腸骨血管の間に回腸が入り込んでいた.発症早期に整復できたため腸管切除は実施しなかった.術直後から右下肢痛は消失し,術後8日目に退院した.骨盤リンパ節郭清術後の絞扼性腸閉塞の症例は少数報告されているが,腹部症状が主訴であった.本症例の右下肢痛は拡張腸管による閉鎖神経の圧排が原因と考えられた.骨盤内リンパ節郭清術後の絞扼性腸閉塞においては,本症例のように下肢痛という非典型的な主訴で発症があることも念頭に置き,診察にあたる必要がある.

  • 神部 宏幸, 三木 明, 粟根 健人, 内田 茂樹, 中島 直樹, 坪野 充彦
    2021 年82 巻7 号 p. 1359-1362
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は膀胱癌に対して膀胱全摘,回腸導管造設術後の62歳の男性.術後フォローのCTで前回手術の回腸回腸吻合部に小腸腫瘍を認め,下部消化管内視鏡検査,病理組織検査の結果,原発性小腸癌疑いの診断となった.小腸部分切除を施行し,病理学的所見で原発性小腸癌と診断された.原発性小腸癌は比較的稀な疾患ではあるが,吻合部に発生する原発性小腸癌の報告は検索しうる限りでは認めなかった.病理組織学的所見からは,小腸腺癌のみならず多彩な分化度をもつ腺腫も存在しており,このことから回腸導管造設術後以降,吻合部粘膜への継続的な遺伝子変異が蓄積されてきたことが示唆される.吻合部自体が腫瘍の発生に寄与した可能性を考慮すると,回腸導管造設術の際の吻合部は下部消化管内視鏡検査で観察可能な範囲に作ることが肝要と考えられた.

  • 神津 慶多, 岡本 耕一, 梶原 由規, 神藤 英二, 畑中 宏之, 上野 秀樹
    2021 年82 巻7 号 p. 1363-1368
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は62歳の女性で,直腸癌に対し腹腔鏡補助下括約筋間切除術を施行し,一時的回腸双孔式人工肛門を造設した.右肺転移出現のため肺部分切除術を優先し,直腸の術後1年で人工肛門閉鎖術を予定した.Colonoscopy(以下,CSと略記)を施行すると肛門側腸管の萎縮と発赤が著明で,CS後に38℃の発熱を認めた.萎縮腸管以外に原因は特定できず,CSによる腸管内圧上昇に伴うbacterial translocation(以下,BTと略記)を疑い手術を延期した.抗菌薬投与で解熱後,人工肛門の口側から排出される便にGFO®を加え肛門側から注入した.週2回,計16回定期的に注入し,BT発症から2カ月後のCSで粘膜萎縮が改善,発熱もなかったため人工肛門閉鎖術を施行した.合併症なく術後7日目に退院した.廃用性萎縮腸管に自己便とプレバイオティクスを投与し,腸管粘膜機能の回復を図り人工肛門閉鎖術を施行しえた1例を経験した.

  • 山根 佳, 山本 智彦, 佐倉 悠介, 樽本 浩司, 服部 晋明, 大谷 裕, 大沼 秀行, 金澤 旭宣
    2021 年82 巻7 号 p. 1369-1375
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は50歳,女性.健診で便潜血陽性を指摘され,下部消化管内視鏡検査を施行されたところ,盲腸にlaterally spreading tumor(LST)を認めた.全身精査目的のCTで,右下腹部上行結腸の腹側に最大径54mmの腫瘤性病変を認め,腹部超音波検査では内部に液体が確認され,嚢胞性腫瘍と診断した.悪性疾患を否定できず手術適応と判断し腹腔鏡下回盲部切除を施行,盲腸LSTを含めて腫瘍を摘出した.術後病理組織検査の結果,気管支原性嚢胞と診断した.腹部領域の気管支原性嚢胞は大半が左上腹部に発生し,右側さらに下腹部に発生することは非常に稀である.今回われわれは偶発的に右下腹部に発見され,腹腔鏡下に切除しえた気管支原性嚢胞の1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

  • 角田 圭一, 青砥 慶太, 大須賀 文彦, 田﨑 和洋, 遠藤 豪一
    2021 年82 巻7 号 p. 1376-1380
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    Malignant rhabdoid tumor(以下MRT)は幼児期に発生する予後不良な腎原発腫瘍であるが,まれに消化管に原発する腺癌の一部分像として認められることがある.われわれは,横行結腸原発のMRTを経験したので報告する.症例は87歳の男性.腹満感を主訴に近医を受診し,便潜血陽性となった.大腸内視鏡検査で横行結腸肝彎曲部に全周性の腫瘍性病変を認め,生検で低分化腺癌の診断であった.腹部CTでは近傍のリンパ節腫大を認めた.横行結腸癌の診断で横行結腸部分切除術を施行した.組織的には,大型類円形核が偏在する未分化なrhabdoid cell(AE1/3,Vimentin共に陽性)が優位に認められ,病理診断はundifferentiated carcinoma with rhabdoid feature,Type2,8.5×6.6cm,SS,Ly1a,V1cであった.Rhabdoid fetureを呈する癌は非常に予後不良とされ,自験例においても急速に全身状態が悪化し,術後40日目に死亡した.

  • 大田 多加乃, 濱洲 晋哉, 伏谷 仁志, 森岡 三智奈, 山岡 利成
    2021 年82 巻7 号 p. 1381-1385
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    Persistent descending mesocolon(PDM)は下行結腸間膜と壁側腹膜との癒合不全による稀な固定異常である.これまで報告例の少ないPDMに伴った傍下行結腸窩ヘルニアを経験したため報告する.症例は74歳,女性.持続する腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.腸閉塞が疑われCTを施行したところ,下行結腸が内側に偏位し,小腸と結腸はともにcaliber changeを呈していた.腸管固定異常に伴う内ヘルニア嵌頓が疑われたため,緊急手術を施行した.下行結腸は内側に偏位し小腸間膜と癒着しており,その外側にヘルニア門を有する傍下行結腸窩を確認した.PDMに伴って発生した傍下行結腸窩への小腸嵌頓ならびに下行結腸による小腸圧排にて,小腸の通過障害をきたしたと考えられた.血流障害は認めなかったため,ヘルニア門を開放し,手術を終了した.腸管固定は施行しなかった.腸管固定異常に起因した腸閉塞の手術において,後腹膜への腸管固定に関しては議論の余地があり,更なる症例の蓄積が望まれる.

  • 都 鍾智, 田中 智子, 松田 恭典, 芦谷 博史, 新関 亮, 田中 賢一
    2021 年82 巻7 号 p. 1386-1390
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は77歳の女性.発熱,腹痛を主訴に救急外来へ搬送された.反跳痛や筋性防御は認めなかったが,採血で炎症反応が高値であり,CTで左側に広がる後腹膜気腫・縦隔気腫・皮下気腫を認めた.腹腔内遊離ガスは認めなかったが,結腸穿孔が否定できず,緊急手術を施行した.手術所見でS状結腸から遊離腹腔側に突出する異物を認め,下行結腸を外側から脱転し観察したが,他に明らかな穿通・穿孔部は認めなかった.後腹膜気腫を伴うS状結腸異物穿孔と診断し,穿孔部で双孔式S状結腸人工肛門を作成した.術後,内視鏡検査でS状結腸に縦走潰瘍瘢痕を認め,異物による同部の粘膜損傷から多様な気腫像を呈したと考えられた.

    下部消化管穿孔において後腹膜気腫を伴うことは稀で,原因が異物による報告はまだない.今回腹腔内遊離ガスを伴わず,広範な後腹膜気腫および縦隔気腫をきたしたS状結腸異物穿孔の1例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 田浦 洋平, 原田 栄二郎, 竹本 圭宏, 田中 裕也, 濱野 公一
    2021 年82 巻7 号 p. 1391-1395
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は69歳の男性.下血に対して前医で経過観察中,急性心不全を発症し当院へ入院.入院後の精査にて多発S状結腸癌と診断され,手術目的で当科紹介となった.術前の腹部造影CTにて下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery;以下,IMAと略記)が上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMAと略記)より分岐していることが判明した.術前診断は,多発S状結腸癌(ともにcT2N0M0,cStage I)で,腹腔鏡下S状結腸切除術を行った.術中所見では術前の画像診断通り,腹部大動脈からIMAの分岐は認めず,同部には腰内臓神経の結腸・直腸枝のみを認めた.SMAから分岐するIMAは左結腸動脈までを温存し,その末梢で切離した.術後は特記すべき合併症はなく退院した.IMAがSMAから分岐する形態は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 赤座 賢, 浅田 崇洋, 渡邉 卓哉, 奥村 徳夫, 岩田 尚宏, 梶川 真樹
    2021 年82 巻7 号 p. 1396-1400
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性.2型糖尿病で当院内分泌内科で治療中に貧血を認めたため,消化管精査を行った.下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍を認め,生検で中分化腺癌と診断された.PET-CTでは原発巣以外に左閉鎖リンパ節へのFDG集積を認めた.手術は開腹S状結腸切除術(D3郭清)および左側方郭清を行った.病理診断はmuc,pSE,ly1,v0,pN0,pM1a(LYM),pStage IVであった.術後補助化学療法としてcapecitabine+oxaliplatin療法を半年間施行した.術後4年経過し,無再発を維持している.側方リンパ節は下部直腸,膀胱,前立腺あるいは子宮付属器の領域リンパ節とされており,直腸以外の大腸癌で側方リンパ節転移を認めることは極めて稀である.今回われわれは,S状結腸癌に左閉鎖リンパ節への孤立性転移を認めた極めて稀な症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 国安 真里奈, 吉田 道彦, 水本 拓也, 平田 建郎, 辻村 敏明, 上野 公彦
    2021 年82 巻7 号 p. 1401-1406
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は87歳,女性.腹痛,血便を主訴に当院を受診.腹部単純CTで直腸からS状結腸に同心円状構造を認め,腸重積が疑われた.肛門から腸管の脱出を認めたが,先進部となり得る腫瘍性病変は確認されなかった.内視鏡的整復は困難であり,観血的整復目的で当科へ紹介となった.同日緊急手術を行い,肛門から用手的に重積腸管を腹腔内に移動させ,開腹下に腸重積の整復を行った.術中大腸内視鏡検査を施行したところS状結腸に2型腫瘍を認め,また重積腸管の壊死が疑われたため同部位を切除範囲に含めたS状結腸切除術を施行した.病理組織所見では2型腫瘍はS状結腸癌の診断であり,その肛門側に腸管壊死の所見を認めた.術後は合併症なく経過し,現在無再発生存中である.肛門外に脱出した腸重積の報告は比較的稀である.今回われわれは,S状結腸癌を術中大腸内視鏡検査により診断,治療しえた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

  • 岸本 彩奈, 杉本 真一, 井上 圭亮, 谷浦 隆仁, 北角 泰人
    2021 年82 巻7 号 p. 1407-1412
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は72歳,男性.半年以上持続する下痢症状に加え食思不振,倦怠感の増強を認め,当院救急外来を受診した.血液検査で腎機能障害と電解質異常を伴う脱水症を認め,腹部造影CTでは直腸を主座とし骨盤内を占居する径12cmの腫瘍性病変を指摘された.緊急入院の上,輸液による脱水と電解質補正を行い,病理診断では一部に高分化腺癌を含む管状絨毛腺腫と診断された.入院中も腫瘍から1日1Lを超える粘液性下痢を認め,絨毛腺腫に随伴する電解質喪失症候群が示唆された.腫瘍を肛門側へ反転させることで骨盤腔に有効な視野を得て,D2郭清を伴う腹腔鏡下直腸切断術を施行した.電解質異常の再発を認めることなく,術後14日目に退院となった.直腸絨毛腫瘍は粘液性下痢による電解質異常と脱水症,および腺癌を合併することが多く,薬物治療・放射線治療も緩和治療としては選択肢となりうるが,充分な電解質異常の制御と腫瘍の根治を目指す場合は外科的な切除術を選択すべきである.

  • 石井 健一, 渡邉 純, 諏訪 雄亮, 小澤 真由美, 石部 敦士, 遠藤 格
    2021 年82 巻7 号 p. 1413-1417
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    直腸間膜全切除(TME)を伴う直腸切除術は直腸癌に対する標準治療であるが,近年,周囲剥離断端(CRM)を確保するための選択肢の一つとして経肛門的全直腸間膜切除術(taTME)が下部直腸癌に対する手術として注目されてきている.しかしながら,taTMEにおける特有の合併症も報告されている.特に男性の前壁側では尿道と直腸が近接しており,その剥離の際に発生しうる尿道損傷はtaTMEにおける重大な合併症の一つである.今回,前立腺全摘術後の下部直腸癌に対し,尿管照射用カテーテル(infrared illumination system: IRIS U-Kit)を術中に使用して尿道をリアルタイムに確認しながら尿道を損傷すること無くtaTMEを施行した1例を報告する.

  • 山名 一平, 大石 純, 武富 啓能, 橋本 竜哉, 谷 博樹, 長谷川 傑
    2021 年82 巻7 号 p. 1418-1422
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    高度胆嚢炎症例に対し腹腔鏡下胆嚢亜全摘術の際,遺残胆嚢をbarbed suture糸(V-LocTM:Covidien社)を用いて連続縫合閉鎖しており,良好な短期成績を得たので報告する.2020年4月から2021年2月までの期間でbarbed suture糸を用いて腹腔鏡下胆嚢亜全摘術を行った5例を検討した.腹腔鏡下胆嚢亜全摘術は,高度炎症のためにCalot三角の展開が困難な症例に対し行われた.遺残胆嚢の縫合閉鎖は全層連続縫合で行った.手術時間は平均198分(150~270),出血量は138ml(15~300)であった.術後在院期間は平均12.6日(11~16)であり,全例,術後胆汁瘻および遺残胆嚢内結石に伴った胆嚢炎・胆管炎は認めていない.腹腔鏡下胆嚢亜全摘術での,barbed suture糸を用いた遺残胆嚢閉鎖は簡便かつ有用である.

  • 大塚 観喜, 吉田 瑛司, 口田 脩太, 佐藤 慧, 河野 剛, 計良 淑子, 高金 明典
    2021 年82 巻7 号 p. 1423-1429
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は37歳,女性.右鼠径部の腫脹と疼痛を主訴に当科を受診した.腹部造影CTで,右鼠径部に境界不明瞭な淡い造影効果を示す軟部陰影と,腹腔内に右子宮円靱帯と連続した嚢胞性病変を認め,子宮内膜症を併存したNuck管水腫が疑われ,切除の方針とした.腹腔鏡による観察で,右子宮円靱帯と連続した嚢胞性腫瘤と右内鼠径輪の開大を認め,Nuck管水腫と右外鼠径ヘルニアの合併と診断した.続いて,前方アプローチで多房性腫瘤を伴った子宮円靱帯を可及的に末梢側で切離した後,中枢側への剥離を追加し嚢胞性腫瘤を損傷することなく標本を摘出した.腹腔内に腹水や癒着は認めず,同時にtransabdominal preperitoneal approach(TAPP法)でヘルニア修復術も施行した.Nuck管水腫の治療は完全切除が重要であり,自験例のように病変の局在が鼠径管から腹腔内まで広範に至ることもあるため,本術式が完全切除に有用であると考えられた.

  • 多代 尚広, 清地 秀典, 杉本 尭, 藤原 幹夫, 桜井 孝規, 滝 吉郎, 河本 泉
    2021 年82 巻7 号 p. 1430-1434
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    非常に稀な小網神経鞘腫を腹腔鏡下に診断し切除した1症例を経験した.症例は59歳,女性.健診目的に施行されたFDG-PET検査にて,胃体部小彎に淡い取り込みを示す40mm大の腫瘤を指摘された.CTでは胃壁との境界は不明瞭であったが,超音波内視鏡検査では胃壁に近接するものの連続性を認めず,胃壁外病変である可能性があった.診断としてGISTを考え,FNAは播種の可能性を考慮し行わなかった.診断的治療目的に手術を行った.腹腔鏡下に剥離を行ったが腫瘤は胃壁に非常に近接しており,胃壁との連続性については不明瞭であった.小開腹し慎重に剥離を進めると,腫瘤と胃壁との間に連続性はなく,腫瘤は小網から発生したと考えられた.病理検査結果では紡錘形細胞の増殖を認め,S-100陽性であり,神経鞘腫と診断された.小網神経鞘腫は稀な腫瘍ではあるが,腹腔内腫瘤の鑑別診断として考慮すべきであると考えられた.

  • 蒲原 知斗, 野﨑 礼史, 松本 正弘, 福沢 淳也, 永田 千草
    2021 年82 巻7 号 p. 1435-1440
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    患者は37歳,女性.2018年11月に健診の腹部超音波検査で骨盤内腫瘍を指摘された.腹部CTで腹腔内の膀胱頭側に120mm大の内部均一・低吸収で境界明瞭,造影効果を伴わない腫瘍を認め,腹部MRIでも腫瘍内部はT1 low,T2 highを示した.悪性を示唆する所見は乏しいものの,腫瘍は比較的大きく,悪性の可能性を完全には否定できなかった.開腹移行も念頭に置き,診断的治療目的に2019年2月に腹腔鏡下の切除を行うこととした.腫瘍は大網内に存在し,播種や癒着を認めず腹腔鏡下に切除可能であった.腫瘍内部は充実性であり,高分化型脂肪肉腫と診断された.術後1年6カ月,再発なく生存している.腹腔鏡下に切除した大網脂肪肉腫は,本邦では過去に報告されていない.術前診断のついていない腹部腫瘍に対する腹腔鏡下の診断的切除は,安全に行えれば許容されると思われるが,脂肪肉腫などの悪性疾患も必ず念頭に置き,腫瘍の破裂や播種を起こさないように十分注意する必要がある.

  • 柳橋 進, 古田 隆一郎, 小坂 至, 宅間 邦雄, 森田 泰弘
    2021 年82 巻7 号 p. 1441-1445
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー

    症例は55歳,女性.3年前に上行結腸癌に対し腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行されている.術前よりCTでTreitz靱帯近傍に25mm大の腫瘤を指摘され,経過観察となっていた.2年6カ月目のCTで僅かに増大傾向を指摘されたため,小腸GISTの疑いとなり腹腔鏡下に腫瘤切除の方針となった.腹腔内を観察すると,Treitz靱帯を越えて直ぐ,上部空腸の腸間膜腹側に白色調の腫瘤が認められた.小腸との連続性はなく,腸間膜由来と考えられた.腫瘤周囲の漿膜を切開,間膜からの栄養血管のみを処理し,腹腔鏡下に腫瘤切除を施行した.病理診断は腸間膜仮性嚢胞であった.医学中央雑誌にて「腸間膜仮性嚢胞」「腹腔鏡」で検索すると,会議録を除く報告症例は27例となっていた.そのうち,腹腔鏡にて手術された症例は6例であり,本邦で腹腔鏡を用いた治療の報告は少なく,今回,腹腔鏡下で治療しえた症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

編集後記
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