2021 年 82 巻 8 号 p. 1543-1549
症例は26歳,女性.遺伝性網膜芽細胞腫の既往があり,乳児期に片側の眼球摘出を受けている.今回,右下腹部痛を主訴に当院を受診し,CTとMRIで11cm大の右下腹部腫瘤を認めた.腸間膜原発の肉腫を疑い手術を施行したが,術中所見にて近位上行結腸間膜内の腫瘤であったため,開腹回盲部切除術を行った.切除検体の病理組織学的診断は平滑筋肉腫の診断であったが,免疫染色にて腫瘍細胞に特異的なRBタンパクの発現消失を認めた.遺伝性網膜芽細胞腫はRB1遺伝子の生殖細胞系列の病的バリアントを原因とする常染色体優性遺伝性疾患で,骨肉腫,軟部肉腫などの二次性悪性腫瘍が発生することが知られており,放射線治療や化学療法がその契機となり得る.本症例は放射線照射,化学療法歴が無いにも拘らず,網膜芽細胞腫治療から25年後に異所性に平滑筋肉腫が発生し,腫瘍特異的なRBタンパクの消失から遺伝性網膜芽細胞腫の続発腫瘍と考えられた稀な1例である.また,続発腫瘍に対する治療によって更なる悪性腫瘍が発生する可能性があり,治療法に関して十分な配慮が必要である.