2021 年 82 巻 8 号 p. 1563-1568
症例は67歳,男性.貧血に対する精査目的に上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体下部大彎側に3型腫瘍を認めた.生検にて胃癌と診断され,近医より当科へ紹介受診となった.腹部造影CTで肝S7に低吸収域を認め,右門脈本幹まで続く軟部陰影を認めた.腹部エコー・MRI(EOB)でも同様な所見を認め,肝転移および門脈腫瘍栓を伴う胃癌と診断し,化学療法を施行した.S-1+CDDPを3コース施行するもCTにて肝内病変および軟部陰影の増大を認めたため,S-1+CPT-11に変更したところ,肝内病変は消失し,軟部陰影は縮小した.根治切除可能と判断し,幽門側胃切除術,肝右葉切除術を施行した.病理組織診断にて,摘出肝右葉内に転移巣を疑わせる所見は認められず,腫瘍栓と思われた軟部陰影は血栓であった.術後補助化学療法は行わず,術後8年4カ月間無再発生存中である.本症例は門脈血栓が腫瘍栓のような経過を示し,非常に判断の難しい症例であった.