2021 年 82 巻 8 号 p. 1600-1605
症例は83歳,男性.1カ月前からの右鼠径部の膨隆と尿排泄困難を主訴に受診した.来院時,右鼠径部から陰嚢にかけての児頭大の膨隆を認め,用手還納は困難であった.CT画像で右鼠径ヘルニアを認め,小腸の脱出を認めた.また,膀胱と両側で尿管から腎盂にかけての拡張を認めた.血液検査では腎機能低下を認めた.腎後性腎機能障害と診断し,膀胱内にバルーンカテーテルを留置し,腎機能の改善を待ってから待機的に手術を行った.術式は,目視下に確実に腹膜前腔にメッシュを留置することを目的に,腹腔鏡下ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:以下,TAPP法)を選択した.術後,尿排泄困難の改善を認めたことから,腎機能障害の原因として鼠径ヘルニアによる尿道抵抗の増加,および腹圧排尿の阻害が考えられた.尿排泄困難を伴う巨大鼠径ヘルニアは,腎機能障害をきたすことがあるため,早期修復の必要性が考えられた.