2022 年 83 巻 12 号 p. 2087-2091
42歳,男性.下腹部痛の精査を施行したところ,下部消化管内視鏡検査にて直腸粘膜下腫瘍が疑われ,骨盤腔内嚢胞性疾患が考えられた.排便困難などの自覚症状を伴い,本人の希望もあり,診断的治療のため手術の方針となった.腫瘤は膀胱,精嚢,上部直腸,下腹神経骨盤神経叢との間に存在しており,全周に脂肪組織をつけるようにして周囲から剥離し,摘出した.病理組織学的検査では腫瘤内腔表面の一部を血管内皮が覆っており,免疫染色でCD31およびCD34が陽性を示したため,真性血液嚢胞と診断した.悪性所見は認めず,術後1年6カ月間再発なく経過している.血液嚢胞は頸部に発生するものが多く,頸部以外に発生することは比較的稀で,術前診断に難渋することが多い.発生位置によっては隣接臓器への外圧排により粘膜下腫瘍様の所見を呈する症例があることを念頭に置き,診療にあたる必要があると考えられた.