2022 年 83 巻 9 号 p. 1638-1643
症例は51歳の女性.食思不振と心窩部痛を主訴に,近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で胃の壁外性圧迫・変形を認め,前医に紹介となった.腹部造影CTで膵前面に小児頭大の充実成分を伴う嚢胞性病変を指摘された.また,腫瘍栓による上腸間膜静脈の閉塞を認め,精査加療目的で当科へ入院となった.超音波内視鏡下針生検により膵腺房細胞癌の診断となった.切除可能と判断したが,上腸間膜静脈の腫瘍栓もみられたため,術前化学療法(GS療法)を行う方針とした.しかし,1コース目で腫瘍の増大により腹痛が増強し,oncogenic emergencyと判断し,準緊急で手術を行うこととなった.膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy,以下PD),および門脈合併切除・再建術を施行した.術後合併症を認めず,術後23日目に退院となった.退院後の腹部造影CTで腹膜播種を認め,GS療法を再開した.4コース終了したところで増悪し,FOLFIRINOX療法へ変更した.その後前医での治療を希望し,同レジメが継続されたが,術後14カ月目に現病死した.