日本臨床外科学会雑誌
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症例
術前に後天性血友病Aの合併を診断し肝切除を行った肝細胞癌の1例
藤田 哲嗣田村 峻介金本 秀行高木 哲彦徳田 智史大場 範行
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2023 年 84 巻 12 号 p. 1907-1912

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抄録

症例は78歳,男性.全身の疼痛を主訴に受診,精査にて後天性血友病Aを合併した多発肝細胞癌と診断した.まず,後天性血友病に対する免疫抑制療法を先行し,凝固第VIII因子自己抗体の陰性化とAPTT値の正常化を達成した.根治切除には肝右葉切除が必要であり,門脈右枝塞栓術を施行の後,肝右葉切除を施行した.術後経過は良好で第15病日に退院,術後半年無再発生存している.また,後天性血友病Aも寛解を維持している.

後天性血友病Aは,自己免疫性疾患や悪性腫瘍により免疫機構が破綻し,後天性に凝固第VIII因子自己抗体が出現し生じる疾患である.本症例では,後天性血友病Aを術前に診断し,その治療を先行することで,安全に肝切除を施行できた.本疾患を術前診断不能であった際の悪性腫瘍の外科切除例では,止血ができず不幸な転帰を辿ることも少なくない.術前にAPTT単独延長などの凝固異常を認めた際には,後天性血友病Aの合併も考慮すべきだと考えられた.

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