2023 年 84 巻 4 号 p. 620-626
症例は85歳の男性で,有痛性の潰瘍を伴う肛門部腫瘤に対して精査目的に紹介となった.各種腫瘍マーカーの上昇は認めず,画像所見で肛門管右側壁に内肛門括約筋を越えて浸潤する腫瘤を認め,肛門管癌が疑われた.内視鏡生検では上皮細胞を同定できず,検体の挫滅も強く確定診断に至らなかった.肛門痛の増悪でADLが低下し,症状緩和目的に人工肛門造設術と切除生検を行った.病理所見では上皮は消退,大型のリンパ球様細胞がびまん性に増生し,CD20などB細胞系マーカーが陽性であり,肛門管原発びまん性大細胞性B細胞リンパ腫の診断に至った.化学療法(R-THPCOP療法)を施行し,2コース後のCT評価で完全奏効が得られた.消化管悪性リンパ腫の治療は,悪性リンパ腫に準じて化学療法が第一選択となる.リンパ腫病変は比較的柔らかく上皮が消退していることもあるため,内視鏡生検で確定診断に至らない場合には自験例のように切除生検が有用と考えられた.