2023 年 84 巻 7 号 p. 1054-1059
症例は72歳,男性.既往に高血圧,慢性腎不全ならびに来院1カ月前に心不全に対する心臓カテーテル検査の施行歴がある.腹痛を主訴に当院を受診し,腹部全体の圧痛と両側足趾に疼痛を伴う壊死所見を認めた.CTで腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で,緊急手術を施行した.小腸に多発潰瘍,また1カ所に穿孔部を認め,小腸部分切除を施行した.術後病理組織学的検査でコレステロール結晶塞栓症による小腸穿孔と診断した.術後21日目に退院となったが,術後49日目に消化管出血を認め死亡となった.コレステロール結晶塞栓症による消化管穿孔は極めて稀で,予後不良な疾患とされている.治療はステロイド療法など有効とする報告はあるが,確立された治療方法はない.消化管穿孔時には適切な術式選択や慎重な周術期管理が重要である.今回,コレステロール結晶塞栓症による小腸穿孔の稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.