2023 年 84 巻 7 号 p. 1070-1075
77歳,男性.前医で肛門腫瘤を指摘され,当科を受診した.直腸診では肛門管内に隆起型腫瘍を触知し,生検では粘液癌と診断された.肛門周囲の皮膚には明らかな肉眼的変化を認めなかった.肛門管粘液癌cT2N0M0 Stage Iと診断し,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.粘液癌であったため,肛門縁から約3cmの皮膚を切除した.病理組織検査では腫瘍周囲に連続する扁平上皮内にPaget様細胞の浸潤を認めた.免疫染色ではCK7陽性,CK20陽性,GCDFP-15陰性であり,pagetoid spreadと診断された.Pagetoid spreadの肛門側進展距離は2cmで,切除断端には腫瘍細胞は認められなかった.最終病理診断はpT3N2bM0のStage IIIcであった.肛門管癌の治療に当たる際には,術前診断がついていない場合でもpagetoid spreadの可能性を念頭に置き,十分な切除範囲を確保する必要がある.