2024 年 85 巻 1 号 p. 82-87
寒冷凝集素症(cold agglutinin disease: CAD,以下CADと記載)は低温下で赤血球が可逆的に凝集し,続く復温で溶血,さらに凝集を契機に血栓性合併症を引き起こすとされる.今回われわれは,肝切除術後に発症し重篤な転機をきたしたCADを経験したので報告する.83歳の女性,CADの診断歴はない.sustained virological response(SVR)後C型慢性肝炎のフォロー中に指摘された肝S5/8とS2の腫瘍に対して開腹下肝前区域切除,肝S2部分切除を施行した.術前血液型検査で冷式自己抗体の保有を指摘されていた.術後3日目より赤血球値,Ht値の著減と高度の赤血球凝集が出現した.術後5日目に胆汁瘻を疑いCTを撮影,門脈血栓と肝右葉壊死を指摘された.術後6日目より高度のチアノーゼが出現し,CADと診断されたが,翌日に死亡となった.病理解剖では血液の高度凝集と血漿の分離を認めた.本症例のごとく術後発症かつ極めて重篤な経過を辿った報告はない.