2024 年 85 巻 6 号 p. 789-794
胃癌に対する幽門側胃切除(DG)後の残胃は,主に脾動脈分枝(短胃動脈,後胃動脈)によって栄養される.そのため,DG後の症例に対して脾動脈を切離する術式を行う場合,残胃の血流障害が懸念される.今回われわれは,DG後に発生した膵尾部癌に対するロボット支援膵体尾部切除(DP)時に,indocyanine green(ICG)蛍光造影により残胃を温存しえた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は80歳の女性で,39歳時に胃癌に対してDG(Billroth I法再建)を施行された.背部痛を自覚し前医を受診し,精査の結果,膵尾部癌(cT3N0M0,cStage IIA)の診断となった.術前化学療法を施行し,ロボット支援DP,脾合併切除を行った.検体摘出後ICGを2.5mg静注すると,残胃は造影効果を示したため温存した.術後3日目より食事を再開し,明らかな合併症はなく9日目に退院した.DG後の症例に対するDPにおいて,術中ICG蛍光造影により安全に残胃を温存しえた1例を経験した.