2024 年 85 巻 7 号 p. 945-951
68歳,女性.59歳時に肝型糖原病と診断され,補食による栄養療法を開始した.持続する肝障害の精査で肝S8(23mm大)およびS3(10mm大)に肝細胞癌を認め,治療目的に当科へ紹介となった.S8病変の局在は肝表であったが,S3病変は肝深部に存在し,かつS3 Glisson根部に近接していた.手術侵襲が糖原病の乳酸アシドーシス発症のリスク因子となることを考慮し,S8病変に対しては腹腔鏡下部分切除術を,S3病変に対しては同時にラジオ波焼灼術を施行した.周術期管理にあたっては,糖原病特有の合併症である低血糖および乳酸アシドーシスを予防すべく,綿密な血糖チェックと補食量の調整を行った.用意周到な周術期管理が奏効し,有害事象なく術後13日目に自宅退院した.糖原病患者においては,より低侵襲な術式選択と周術期の血糖および乳酸値の管理を可能にする計画的な周術期治療戦略が重要である.