2024 年 85 巻 9 号 p. 1232-1236
症例は70歳,男性.2023年3月,遺伝性多発囊胞腎の感染コントロールのために両側腎摘出術を施行し,以後は血液透析を施行していた.2023年4月,腹痛と血液検査で炎症反応の上昇(WBC:10,800/μL,CRP:23.6mg/dL)を認め,腹部造影CTで小腸穿孔を疑い,緊急開腹手術を施行した.術中所見では,Treitz靱帯近傍から広範囲に渡って多発する空腸憩室を認めた.Treitz靱帯より約40cm肛門側で腸間膜側への空腸憩室穿通を認め,穿通部を含む空腸部分切除術を施行した.病理組織学的には小腸仮性憩室の穿通の診断であった.空腸憩室穿通は比較的まれな疾患であり,腸管膜内膿瘍を形成し腹膜刺激症状が出現しにくいため,術前診断が困難なことが多いと言われている.身体症状に乏しく診断に苦慮するうちに重症化する可能性があり,発熱と腹膜刺激症状の乏しい腹痛を認めた場合は本疾患も鑑別に挙げる必要がある.