2026 年 87 巻 1 号 p. 12-16
症例は橋本病と甲状腺囊胞性腫瘤の既往のある52歳,女性.甲状腺左葉の急速な腫大,嚥下困難,呼吸困難を主訴に近医より当院へ紹介.超音波所見では,無エコーの囊胞や充実成分のある囊胞が混在する多房性囊胞性腫瘤が甲状腺左葉の大部分を占め,右葉には一部に充実成分,大部分が充実成分で占められた2つの囊胞性腫瘤を認めた.両葉の囊胞性腫瘤の穿刺吸引で,やや粘調・黄白色混濁調で無臭の液体が採取され,細胞診所見は多数の泡沫細胞と血液成分のみであった.穿刺吸引後に囊胞は短期間で増大して症状も継続し,囊胞とリンパ管・胸管との交通の可能性から,甲状腺全摘術を行った.囊胞内容液の検査ではコレステロールが高値を示し,病理結果はリンパ上皮囊胞の組織像であった.超音波所見,囊胞液の性状やコレステロール値に注意すれば術前診断は可能と考えられた.