日本臨床細胞学会雑誌
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症例
著明な高カルシウム血症を伴った卵巣小細胞癌の 1 例
倉林 工松下 宏阿部 伸子苅部 豊清野 俊秀志田 幸江橋立 英樹渋谷 宏行
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2008 年 47 巻 2 号 p. 127-130

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抄録
背景 : 卵巣小細胞癌, 高カルシウム (Ca) 型は, その発生起源が不明で, 若年女性に発症し, 有効な治療法も確立されていない予後不良のまれな腫瘍である.
症例 : 24 歳未婚 0 妊 0 産. 主訴は腹部膨満感で, 入院時軽度の意識障害あり, 補正血清 Ca 20.0 mg/dl, parathyroid hormone-related peptide (PTHrP) 29.5 pmol/l (正常<1.1) であった. 開腹すると割面が白色充実性一部嚢胞性の左卵巣腫瘍 (約 20 cm 大, 2100 g) を認めた. 大網に微小転移像を認め, 術後診断は卵巣小細胞癌 (高 Ca 型) 臨床進行期IIIa 期であった. 腫瘍捺印細胞像は, 結合性疎な N/C 比大の小型異型細胞がシート状にみられ, 管腔, 濾胞状形成を示す集塊も存在した. 核は類円形∼やや楕円形で大小不同を示し, 1∼数個の小型核小体を有し, クロマチンは細顆粒状∼顆粒状で, 核分裂像や核溝も散見された. 免疫染色では PTH 陰性, PTHrP 弱陽性であった. 術後高 Ca 血症が改善したが, 本人は化学療法を希望せず, 癌性腹膜炎が急激に進行し術後約 2 ヵ月で永眠した.
結論 : 卵巣小細胞癌, 高 Ca 型の診断には, 高 Ca 血症による臨床所見とともに, 腫瘍捺印細胞像と免疫染色による PTHrP 陽性所見も参考所見になると考えられた.
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© 2008 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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