2008 年 47 巻 2 号 p. 137-141
背景 : 結節性筋膜炎は良性疾患であるが, 偽肉腫性線維腫症ともいわれ, 急速に増殖し, 細胞診断時に肉腫との鑑別が問題となる. 穿刺吸引細胞診で結節性筋膜炎と推定診断しええた, エストロゲン・レセプター (ER) 陽性のまれな乳房内結節性筋膜炎の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 35 歳, 女性. 右乳房 C 領域に 2×1×1.5 cm 大の可動性良好な腫瘤を触知した. 穿刺吸引細胞診では類円形∼楕円形の核を有する, 均一な紡錘形の線維芽細胞が豊富にみられ, その背景には炎症性細胞, 粘液様物質を認めた. Class II と判定し, 結節性筋膜炎と推定診断した. 針生検でも線維芽細胞が組織培養様の所見を呈して増殖し, 炎症性細胞, 間質性粘液様物質もみられ, 結節性筋膜炎と組織診断した. 臨床的には悪性が疑われたため切除生検が行われた. 腫瘤は筋膜に接する結節性筋膜炎で, ER 陽性であった.
結論 : 乳腺腫瘤の穿刺吸引細胞診で紡錘形の線維芽細胞がみられたときには, 結節性筋膜炎の可能性を念頭におく必要がある.