日本臨床細胞学会雑誌
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特集 <甲状腺穿刺細胞診—濾胞性腫瘍の問題点—>
甲状腺濾胞性腫瘍の細胞診
—診断の現状と細胞学的鑑別—
前川 観世子廣川 満良柳瀬 友佳里隈 晴二宮内 昭
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2010 年 49 巻 1 号 p. 48-54

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抄録

目的 : 甲状腺穿刺吸引細胞診にて濾胞性腫瘍を疑った症例を対象に, その診断精度と臨床的対応を分析するとともに, 細胞学的判断基準を検討することにした.
方法 : 穿刺吸引細胞診が行われた甲状腺結節 1 万 11 個のうち, 濾胞性腫瘍が疑われた 529 個を対象に検討した. 手術が行われた 122 個については, 診断別に細胞学的特徴を検討した.
成績 : 細胞診で良性 (323 個), 鑑別困難 (202 個), 悪性の疑いおよび悪性 (4 個) と区分された結節の手術施行率は, それぞれ 15.2%, 51.0%, 75.0%であった. 鑑別困難例にて「腺腫様結節を考えるが濾胞性腫瘍が否定できない」「濾胞性腫瘍を考える」「濾胞癌が否定できない」とコメントした場合の手術施行率は 40.4%, 58.0%, 89.5%であった. 良性および鑑別困難と報告し, 手術が行われた結節のそれぞれ 10.2%, 13.6%は濾胞癌であった. 立体的小濾胞と厚い索状配列は濾胞癌にみられやすかった. 乳頭状配列は濾胞腺腫や濾胞癌ではみられなかった.
結論 : 濾胞性腫瘍は鑑別困難として報告することが妥当と思われるが, 推定診断を記載したり, 良悪性を念頭に細分して報告したりすることはその後の治療方針を決定するうえで役立つと思われる. 立体的小濾胞と太い索状配列は濾胞癌を示唆する所見と考えられた.

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© 2010 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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