抄録
背景 : 卵巣成人型顆粒膜細胞腫 (AGCT) は境界悪性腫瘍に分類され, 晩期再発が多いことが知られている. 今回, われわれは術中迅速捺印細胞診が診断に有用であった AGCT の胸壁転移例を経験したので報告する.
症例 : 44 歳, 女性. 約 1 年前に近医での CT 検査で右胸部腫瘤を指摘され, その後増大傾向を示したため当院に紹介受診となった. 術中所見で腫瘤は胸壁に存在し, 右肺に直接浸潤していた. 術中迅速捺印細胞診では, N/C 比が高く, 細胞質に乏しい細胞が孤立散在性∼小型集塊状に出現していた. 核クロマチンは細顆粒状で軽度増量し, コーヒー豆様の縦溝が観察された. 免疫細胞化学的にα-inhibin 陽性であったことと併せて, AGCT の転移と推定した. 後に 13 年前の卵巣 AGCT の手術歴が判明し, 病理組織学的に AGCT の胸壁転移と診断した.
結論 : AGCT は晩期再発をきたすことが多く, 本例のように診断時に腫瘍の既往が不明であることがあり, ときにその診断に苦慮する. 詳細な細胞像の検討から AGCT の転移の可能性を疑い, 既往歴の確認とα-inhibin の免疫細胞化学染色が診断に有用であった.