目的 : 本論文の目的は, ワルチン腫瘍様乳頭癌の細胞所見および鑑別診断を明らかにすることである.
方法 : ワルチン腫瘍様乳頭癌 33 例の細胞診標本を後ろ向きに検討した.
成績 : 全例にて乳頭癌と診断されていたが, 本亜型が推測されていたのは 2 例のみであった. 1) 背景に多数のリンパ球・形質細胞, 2) 乳頭状・シート状腫瘍細胞集塊, 3) 柵状配列を示す高円柱状腫瘍細胞, 4) 腫瘍細胞の好酸性細胞質, 5) 腫瘍細胞核の細∼粗顆粒状クロマチン, の全ての所見を満たす症例は 27 例 (81.8%) であった. また, 偽角化や淡明化した腫瘍細胞も出現していた.
結論 : 本亜型を積極的に推定する意義は少ないが, 高細胞型乳頭癌, びまん性硬化型乳頭癌, 好酸性細胞型濾胞性腫瘍, 橋本病との鑑別が必要な場合があることから, この疾患概念や細胞像の特徴に精通していることは重要と思われる. 特に高細胞型乳頭癌は, 臨床像や予後がそれぞれ異なることから細胞診学的鑑別が必要である. 高細胞型乳頭癌は高齢者に多く, 背景に橋本病がないこと, ワルチン腫瘍様乳頭癌は若年者に多く, 明瞭な結節形成がなく, 広範なリンパ節転移があることが参考になる.
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