日本臨床細胞学会雑誌
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原著
甲状腺細胞診「不適正」の評価
—甲状腺ベセスダシステム導入に向けて—
鈴木 彩菜廣川 満良延岡 由梨山尾 直輝隈 晴二網野 信行宮内 昭
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2013 年 52 巻 4 号 p. 304-309

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抄録

目的 : 新報告様式である甲状腺ベセスダシステム (Thyroid Bethesda System : TBS) は現行の甲状腺癌取扱い規約 (規約) とカテゴリー分類や基準が異なる. 本研究では, TBS の導入に向けて, 診断カテゴリー「不適正」における両報告様式の比較検討を行うことにした.
方法 : 2012 年 4 月∼7 月の 4 ヵ月間に, 甲状腺穿刺吸引細胞診が施行された 1072 結節のうち, 通常塗抹標本と針洗浄液を用いた液状化検体細胞診 (Liquid based cytology : LBC) 標本の少なくとも一方が「不適正」であった 118 結節を検討対象とし, 超音波所見および細胞診標本を見直した.
成績 : 不適正率は規約 (5.3%) より TBS (7.6%) で高かったが, 針洗浄液を用いた LBC の併用によりそれぞれ 1.2%, 2.9%に減少した. 「不適正」例の再検は超音波判定で悪性が疑われる場合に施行されていた. 超音波判定が良性, 石灰化結節では, 通常塗抹標本よりも LBC 標本で不適正率が低かった.
結論 : TBS の導入により, 「不適正」例は規約に比べ増加するが, 針洗浄液を用いた LBC の併用により, 不適正率を減少させることができた. 不適正例の再検は超音波所見を加味して考慮されるべきと思われた.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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