日本臨床細胞学会雑誌
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原著
髄膜癌腫症における髄液細胞診の検討
—腺癌症例を中心に—
桜井 友子神田 真志畔上 公子北澤 綾弦巻 順子豊崎 勝実川口 洋子木下 律子川崎 隆本間 慶一
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2016 年 55 巻 5 号 p. 308-314

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抄録

目的 : 髄膜癌腫症 (leptomeningeal carcinomatosis, 以下 LC) は, 癌細胞の髄腔内転移により起こる病態で予後不良である. 当院における LC 症例について, 腺癌症例を中心にまとめ, 疫学的な検討を加えた.

方法 : 1992~2013 年の間に髄液細胞診が行われた 5812 検体 1310 例を対象に検討した.

成績 : 22 年間で LC 症例数は 5 倍以上に増加した. 特に腺癌では, 2006 年以降増加傾向が明らかとなった. 陽性は 1267 検体 407 例で, 上皮系 245 例, 非上皮系 160 例, 不明 2 例であった. 腺癌は 220 例で原発臓器は, 肺 (115 例), 乳腺 (76 例), 胃 (14 例) の順であった. 乳癌は, LC 発症までの期間が平均 79.2 ヵ月と肺癌や胃癌より有意に長かった (p<0.01). 肺癌は, LC 発症後の予後が 2006 年以降はそれ以前より有意に長く, 平均 6.6 ヵ月と約 3 倍になった (p<0.01).

結論 : がん治療の進歩や, それに伴う中枢神経系の合併症の増加により, LC を診断する機会は多くなった. LC の早期診断と適切な治療のために, 髄液細胞診は今後も増えると考えられる.

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