日本臨床細胞学会雑誌
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症例
Collagenous spherulosis を認めた乳腺疾患の 1 例
井関 文畠 榮小林 晴美原 稔晶下山 芳江中村 栄男
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2016 年 55 巻 6 号 p. 406-411

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抄録

背景 : 乳腺 Collagenous spherulosis (以下, CS) は, 腺房内や管腔内で, 球体とそれを取り囲む細胞が篩状を模倣した構造を形成する. われわれは CS を認めた乳腺疾患の 1 例を経験し, 細胞像, 球体の構成成分と染色性に関して報告する.

症例 : 50 歳代, 女性. 乳腺超音波検査で低エコーの腫瘤を認めた. 穿刺吸引細胞診では, 小型細胞の集塊内に, 間質性粘液球や硝子球を多数認めた. 粘液球は, 44~110μm 大で, うち中型の粘液球はヘマトキシリンに淡染し, 類円形核の立方状細胞に囲まれていた. 小型の粘液球はライトグリーンに好染し, 一部, 球体内に星状の構造物を認めた. 硝子球は, 約 40μm 大でライトグリーンに濃染した. また type Ⅳ collagen, laminin に強陽性, PAS 反応が強陽性で, CS の所見と一致した. 硝子球を囲む楕円形裸核細胞は p63 が陽性であった. 集塊内でも硝子球付近に p63 陽性細胞が多く, 硝子球から離れた類円形核の細胞は p63 が陰性であった.

結論 : CS は, 筋上皮細胞が形成する球状の基底膜物質から構成される. CS の出現は成熟した筋上皮の存在を示すため, 良性疾患を判定する指標となる.

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© 2016 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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