日本臨床細胞学会雑誌
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症例
臨床的に顎下腺腫瘍が疑われた粘液線維肉腫の 1 例
神田 真規杉山 佳代佐々木 健司米原 修治
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2020 年 59 巻 2 号 p. 99-102

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抄録

背景 : 粘液線維肉腫は四肢の皮下に好発し, 頭頸部領域での発生はきわめてまれである. 今回われわれは, 臨床的に顎下腺腫瘍が疑われた粘液線維肉腫の 1 例を経験したので報告する.

症例 : 50 歳代, 男性. 左顎下腺腫瘍の疑いにて, 当院耳鼻咽喉科を紹介された. 触診では硬結を伴う可動性不良な腫瘤が触知され, 細胞診検査が行われた. 細胞診標本では出血性背景の中に粘液様物質が認められた. 紡錘形核をもつ異型細胞がリンパ球と混在し, 散在性から一部集塊状に出現していた. 異型細胞の核は大小不同を示し, 奇怪な核をもつ大型細胞もみられクロマチンは細顆粒状に増量していた. 以上の所見から鑑別困難とし, 粘液線維肉腫疑いと診断した. 病理組織学的に腫瘍は, 顎下腺周囲の軟部組織に発生した粘液線維肉腫であった.

結論 : 背景の粘液様物質, 紡錘形核をもつ異型細胞の増生と核の多形性, さらに奇怪な核をもつ大型細胞を見出すことが粘液線維肉腫を推定できる手掛かりになると考える.

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