2020 年 59 巻 4 号 p. 192-196
背景 : 脊索腫 (chordoma) は胎児期脊索に由来する比較的まれな悪性骨腫瘍である. 今回われわれは左胸壁に発生した脊索腫の 1 例を経験したので報告する.
症例 : 80 歳代, 男性. 左胸壁に皮下腫瘤を指摘され, 組織生検で脊索腫と診断された. 経過観察していたが, 腫瘤に増大傾向を認めたため, 腫瘍摘出術を施行した. 摘出された腫瘍の割面はモザイク状に乳白色調の領域と灰白色調の領域が混在する充実性病変で境界はおおむね明瞭であった. 捺印細胞診では粘液基質様の背景に上皮様結合を有する多稜形の腫瘍細胞が大小の細胞集塊を形成して出現し, 類円形様の核内封入体をもつ細胞を多数認めた. 細胞質はライトグリーンに淡染し, 坦空胞細胞も認められた. 組織標本では上皮様細胞や坦空胞細胞がシート状および索状に配列し, 周囲には粘液状基質を伴っていた. 偏在性に核内封入体を多数含む腫瘍細胞もみられた. これらの腫瘍細胞の核は免疫化学染色で brachyury に陽性を示した. 以上の所見より脊索腫と診断した.
結論 : 中心骨外発生の脊索腫 (extra-axial chordoma) はまれであり, その診断は困難であるが, 本例は, 組織像・細胞像のいずれも脊索腫に特徴的な所見を示しており, 免疫組織化学的にも brachyury が陽性を示し, 診断しえた.